みんなでアジャイル ―変化に対応できる顧客中心組織のつくりかた

概要

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目的

ヘビーリスナーとして聞いているYokohama North AMにて、アジャイル心理的安全性が分かりやすいと紹介されていたため。

目標

アジャイル心理的安全性を掴む。

総評

少ないページ数だが内容は濃厚。各章において、いくつかの企業の実例を交えることで、内容が理解しやすくなっているし「なるほどねー。」と思えた。
SpotifyAmazonは勿論、コカコーラといったIT以外の分野の実例も登場している。

アジャイルには思考と行動の両方が伴うというのは、とても自分に刺さる内容だった。ページ数が少ないが要点は抑えているので、チーム内で読み合わせしても面白そう。

ピックアップ

1章 「アジャイル」とはなにか?なぜ重要なのか?

アジャイルについて導入の章。

「ムーブメントとしてのアジャイル」という表現が興味深い。 ちょうど最近「スクラムにはマインドセットが必要ではないか?」と議論になった。しかし、この章では「マインドと手法は容赦なく繋がっていて切り離せない」と書いてあり、手厳しい内容となっている。

「うまくいかないのはマインド or 手法のせいだ」という話ではないということは、忘れないでおきたい。

2章 自分たちの北極星を探す

アジャイルラクティスに沿うだけでは不十分という話。

例えば、「今よりもっと早く価値を届ける」ためにアジャイルを導入する場合、「なぜ今遅いか」から目を背けることはできない。 そこから目を背け、アジャイルラクティスを取り入れても、名前を変えて今までのことをやっているだけ。

と書いてあり、非常に耳が痛い。

本書で紹介されているように、下記の質問に答えて、自分たちの北極星を探していくことが大事なんだろう。

  • チームや組織が将来なりたい状態は?
  • チームや組織の現在の状態は?
  • 将来なりたい状態になれないと思う理由はなにか?

3章 顧客から始めるのがアジャイル

1番重要で1番難しいのは、顧客を中心に考えることという話。

「組織があることで問題を難しくしているよ」という話が丁寧に紹介されていて良い(組織重力の第1法則というらしい)。 また速度もアイディアも顧客視点で見るべきという話は非常に納得できる。

弊チームも多分に漏れず、スプリントレビューなどでプロセスの話題が多く出ているため、 本章で紹介されているような「顧客中心」の質問を増やしていきたいと思った。

4章 早期から頻繁にコラボレーションするのがアジャイル

題名の通り、チームのコラボレーションについてがメインで、心理的安全性に通じる話もある。

距離が近いメンバーと働くことに意識が向きがち(組織重力の第2法則というらしい)な考えがあり、 アジャイルはそれを逆に利用する設計になっているという点は面白かった。

Spotifyの例を出しながら、報告と批評の文化から協調の文化へ行くことを説明している。

この章はチーム文化について色々と書いてあり、自分たちの現状に近しいものが数多くあった。

1つ取り上げるなら非同期コミュニケーションが多いところで、常々個人的にも課題と感じていた。 現状コロナ禍で物理的に同じ部屋にいることは難しいが、チャットツールなどを用いて擬似的に再現していきたいと感じた。

コカコーラのコラボレーションの例は、アジャイルがITかどうかに関係なく適用できる例として参考になった。

P.S.

評価がサイロの中や個人レベルで行われるなら、個人はその評価を求めるようになります。
私達はチームワークを評価しなければいけないし、チームワークを受け入れなければいけないのです。

Spotifyの例に出てきた上記は、確かにそうだなと思った。 評価が個人の功績に対してのみ行われる場合、チームワークを意識するのは難しい。

5章 不確実性を計画するのがアジャイル

「不確実性を計画する」というやや矛盾を含んだようなタイトル。 しかし、読み進めていくとこの言葉の意味するところがわかってくる。

「何が成功するか」の確証はないので、仮設を立てて実験をし、ふりかえることで確かめていくしかないという話。

ふりかえりで効果的なプラクティスも載っており参考になる。

余談

「スプリントを固定することによって逆に柔軟性が高くなる」というのは、言われるとそうだと思った。

自分たちは1週間スプリントとしているが、毎スプリント後にプロダクトゴールを考え、次のアプローチを検討している。
そうすることで、より大胆な打ち手を実施できているので、これは改めて効果を実感した。

6章 3つの原則に従い、速くて柔軟で顧客第一なのがアジャイル

今までの話をまとめる章。 顧客第一・コラボレーション・不確実性の許容を組み合わせることで、より効果を得られるということが書いてある。

この章で興味深いと思ったのは、ボトムアップアジャイルを取り入れる方法が書いてあること。 トップダウンで進めるより難しいのだが、どういった手引で自分の上長にアジャイルを進めるかが書いてあり、参考になった。

メンバーはリーダーの発言ではなく行動を真似る

ここは結構気をつけないと行けないと思った。所謂「背中を見せる」というか「背中を見ている」というところだろう。 自分がリーダーかどうかはさておき、発言ではなく背中を見られていることは意識したい。